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HOME >  第10回 大型観光バスの衝突被害軽減ブレーキ -西村直人の「これからの自動運転、みんなの技術」

西村直人の「これからの自動運転、みんなの技術」

目前に迫る「自動運転」の時代。わが国の政府も2020年までの実用化を掲げています。
ハンドル操作が不要になる? 前方車両の追い越しまで車が自動でやってくれる?
いやいや、実は「自動運転」ってそれだけじゃありません。
自動運転の開発によって培われた技術は、さまざまな分野への転用が期待されています。
自動運転の技術と、その自動運転が変革していく社会を、最新情報を織り交ぜながら、
このコラムでは解説していきます。

第10回 大型観光バスの衝突被害軽減ブレーキ
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作動時の動画あり

乗用車やトラックと同じくバスの安全性向上に向けた取り組みも継続的に行われています。また、車内で乗客が負傷する事故(これを車内事故と言います)を防止する観点から、日本では2008年6月1日から乗客に対するバス乗車中のシートベルトが義務化(路線バスなど一部車種を除く)されました。そうしたことから前回(第9回)に引き続き、衝突被害軽減ブレーキ(今回は大型観光バス編)をご紹介します。筆者自らが実走テストを行うとともに、衝突被害軽減ブレーキが作動する様子を車内と車外から撮影。併せて開発担当者へのインタビューも行いました。

事故を防止するには、危険な状態に近づけない「予防安全」が大切です。三菱ふそうではドライバーの運転注意力モニターである「MDAS-Ⅲ」(Mitsubishi Driver' s Attention monitoring System―Ⅲ)を2007年から大型観光バスに標準で装備しています。道路上の白線を認識する光学式カメラを備えた「MDAS-Ⅲ」は、車速や白線からのはみ出し量、ステアリングの操作量、さらにはクラッチやウインカー、補助ブレーキ(リターダと呼ばれる大型車独自のブレーキ装置)からの信号を読み取り、それらの情報を車載のCPU(Central Processing Unit/中央処理装置)に集約することで、ドライバーの注意力をファジイ推論(予測手法のひとつ)に基づき判断します。そして、ドライバーの注意力が低下傾向にあり、放っておくと散漫になるであろうと判断された最初期のタイミングで、ディスプレイ表示や警報ブザーによる注意喚起によって休憩を促します。

取材した大型観光バスにもこのMDAS-Ⅲが装着されていますが、衝突被害軽減ブレーキ(三菱ふそうでは「AMB2.0」と呼称)はその機能とは別に単独で機能するADAS(アドバンスド ドライバー アシスタンス システム/先進安全技術)です。

実走テストでは、時速40km弱でターゲット(目標物)に向かって直進しました。そうすると衝突の危険性が高まったとシステムが判断した時点(衝突が予測される約1.6秒前)で警報ブザー(断続音)とメーター内のディスプレイ表示によってドライバーにブレーキ操作などの回避動作が促されます。にもかかわらず、ドライバーが反応できず衝突が避けられないとシステムが判断した時点(同約1.2秒前)では、連続音へと変化した警報ブザーとともに非常に強力なブレーキ(瞬間的な減速度は0.8G以上)が自動的にかかります。市販スポーツカーの最大減速度が1.1~1.2G程度ですので、いかに強力であるかおわかり頂けると思います。

乗客としても体感してみました。動画で確認頂けるように運転席ではハンドルにしがみつくことができたので強力なブレーキに耐えることができましたが、乗客の場合、支えるものがないためシートベルトがギュッと身体に食い込むほど前のめりになります。また、開発時の実験映像ではシートベルトをしていないダミー人形が前方座席に頭部を強打している様子も記録されています。以上のことから、乗客として乗り込んだらすぐにシートベルトを装着することが大切であることがわかりました。これは「法規に定められている」という理由だけでなく、車内事故を抑制する効果的な対策のひとつであることから実践して頂きたいと思います。

システムの最終段階で作動する自律自動ブレーキと、警報ブザーが鳴った時点でドライバーが急ブレーキを踏んだ際にどんな差が生じるのか筆者による実走テスト(上の動画)を行いました。どちらも時速40km弱で同じターゲットに直進しています。システムによる自律自動ブレーキではターゲットの手前5㎝(!)ほどで停止しましたが、ドライバーによる急ブレーキでは約3m手前で停止しています。現在、衝突被害軽減ブレーキの法規に定められたシステム要件には「路面の滑りやすさ」を把握する項目が必須でないことから、雨で路面が濡れているなど滑りやすい環境では制動距離が延びターゲットに衝突していた可能性が考えられます。一方、ドライバーによる急ブレーキでは手前からブレーキがかけられるため滑りやすい環境であっても車両の走行速度を落としやすいことがわかりました。

公開日 2016年10月13日

西村 直人氏(交通コメンテーター)

西村 直人【交通コメンテーター】

特別編「CACCを試してみた」

1972年東京都生まれ。クルマとバイク、ふたつの社会の架け橋となることを目指す。得意分野はパーソナルモビリティだが、WRカーやF1、2輪界のF1であるMotoGPマシンの試乗もこなす。近年では大型のトラック&バス、トレーラーの公道試乗も行うほか、HVのバス&電車など、物流や環境に関する取材も多数担当。2007年度東京都交通局バスモニター。「JAF Mate」誌では、本誌初の二輪連載企画を4年間担当。大型第二種免許/けん引免許/大型二輪免許、2級小型船舶免許所有。

  • 日本自動車ジャーナリスト協会(A.J.A.J)理事(ITS分科会リーダー)
  • (財)全日本交通安全協会 東京二輪車安全運転推進委員会 指導員
  • (協)日本イラストレーション(JILLA)協会 監事
  • 日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員(2010年度から)
西村直人のACC最前線

過去の連載はこちら

日々進歩していくACC。ACCの歴史から技術の未来まで、じっくり解説します。 連載期間:2014年9月~2016年3月

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